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  | HOME | >第183回国会活動報告>>我が国が今後開拓すべき研究分野とは





2013年5月30日
衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員会
議事録より
「日本全国、47都道府県に多分いろいろな技術があって、その一覧表みたいなものがないかなと思って取り寄せをしてみたんですけれども、なかなかそういう資料がないということだったので、ぜひ、こういう医療技術、製造技術、また、農業の技術、建築技術、日本じゅうが技術の宝庫だと思いますので、こうした足元にある、これまでの蓄積された技術を今こそ吸い上げて、光を当てていくということも大事なのではないかと考えます。
→後日、早急にまとめていただいた資料とともに、地域のものづくりに精通する自治体等関係者による会議の開催を前向きに検討してる旨、大臣よりご連絡いただきました。今後の取組に期待いたします。



○青木愛

 次の質問に移らせていただきます。ちょっと視点は変わりますけれども、山本大臣のお膝元、群馬には、IHIエアロスペースという会社があります。「はやぶさ」の回収カプセルを設計、開発した会社であると思います。また、救命救急に活躍するAEDも、群馬の日本光電工業株式会社の富岡工場でつくっておられます。また、楽器のウクレレとかハンドベルも、群馬だけで製造されていると聞いています。
 私の地元のことで恐縮ですが、東京都北区でもさまざまな技術がありまして、例えば、手術をする医師の手の大きさや長さに応じて、医師の好みに合わせてフルオーダーではさみなどの手術道具をつくる、そういう鉗子の技術が田中医科器械製作所というところにあります。また、細い直線の針金をつくるのは大変な技術なんですが、この針金の先にカメラやはさみをつけて、医療用のカテーテルに活用されています。その針金をつくっている佐藤精巧直線という企業もございます。また、千五百度の温度がはかれるセンサー技術、これも日本で二社、世界でも数社しかない技術があります。また、半導体の性能を検査する超精密機械を実用化した、世界で二人しかいない、そのうちの一人が北区の製作所の方にいらっしゃいます。
 検査機器を扱うというのが、北区の物づくりの一つの特徴でもあるんですけれども、これから、成長分野である医療現場と物づくり企業の技術をつなげていこうということで、今自治体も考えているところであります。
 日本全国、四十七都道府県に多分いろいろな技術があって、その一覧表みたいなものがないかなと思って取り寄せをしてみたんですけれども、なかなかそういう資料がないということだったので、ぜひ、こういう医療技術、製造技術、また、農業の技術、建築技術、日本じゅうが技術の宝庫だというふうに思いますので、こうした足元にある、これまでの蓄積された技術を今こそ吸い上げて、光を当てていくということも大事なのではないかというふうに考えます。
 今、いろいろな会議や本部や戦略室等が立ち上がっていますけれども、ぜひ、そうした状況を把握している都道府県や、また市町村の関係者の方々からも意見を伺う機会をつくられたらどうかなというふうに思いまして、これが日本の成長戦略の底力というか、底を支える大きな力になるのではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。


○山本国務大臣

 群馬県の会社と産業のことを調べていただいて、ありがとうございました。
 今、青木委員のおっしゃった、地域発のすぐれた技術のいろいろな例は大変参考になりました。
その地域発の技術を持った関係者の方々といろいろと意見交換をしたらどうかというアドバイスは、どういう形になるのかわかりませんが、真面目に検討してみたいと思います。どういう枠組みになるのかわかりませんが、そういう方々と少なくとも意見交換をするというのは大変意味があるというふうに思っております。
 それから、地方発のすぐれた科学技術の例を集めた資料がないということだったので、これも、どこかにあるのかないのかわからないんですけれども、もしないとすれば、恐らく何らかの形でそういうものがあった方がいいのかもしれないので、それもちょっと、私、今のお話を受けて、研究をさせていただきたいと思います。
 それから、その上でちょっと御答弁を申し上げたいと思いますが、我が国がグローバル市場において持続的かつ発展的な競争力を維持するためには、これはもう、今おっしゃったように、地域におけるすぐれた技術を生かす、地域産業に新たなイノベーションを起こすとともに、地域経済の活性化を行うということは大変大事だと思っております。
 総合科学技術会議で現在策定中の、何度も出てきておりますが、科学技術イノベーション総合戦略においても、地域におけるすぐれた技術を生かすことが重要だというふうに考えておりまして、地域企業、大学等、産学官が連携しながら地域産業の発展を推進する等といった取り組みの重要性を盛り込んでおります。
 具体的には、地域企業のすぐれた技術、少量多品種で高付加価値の製品、部品の製造に適した三次元造形等の革新的な生産技術というものを、地域が持つさまざまな資源と組み合わせる、この融合によって地域の物づくり産業に新たなイノベーションを起こす、こういうこと等を同戦略に盛り込んでおりまして、確実に成果が出るよう進めてまいりたいと思います。
 もう言うまでもありませんが、委員がおっしゃった北区のいろいろな技術のほかにも、例えば、有名な岡野工業さんの、蚊の針と同じ細さの痛くない注射針とか、あと、これは実は総合科学技術会議のやったいい仕事だと思うんですけれども、医療プロジェクトなんですが、ナカシマメディカル株式会社、すぐれた船舶用のプロペラ技術を人工関節に転換して成功した例というのもありますので、そういう地域発のすぐれた技術をしっかり生かせるような体制をつくっていけるように、担当大臣として努力をしてまいりたいと思います。



○青木愛

 ぜひよろしくお願いします。
 眠っているというか、なかなかまだ表に出てきていないすぐれた技術がたくさんあると思いますので、ぜひ、日本全国挙げて、地方の声を生かしていただきたいというふうに思います。



2013年6月21日
衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員会
【参考人】

理化学研究所理事長:野依良治先生(平成13年ノーベル化学賞受賞者)

政策大学院大学長:白石隆先生



○青木愛

 よろしくお願いいたします。
 野依先生は、さまざまな御発言力も大変重いものがあろうかと伺っておりますけれども、率直に言って、どういった研究分野、どういう分野を今後開拓すべきだと野依先生は今お考えになっておられますでしょうか。


○野依参考人

 科学技術が何のためにあるのかということにやはりさかのぼらなければいけないと思っております。
 昔は、科学技術というのは、軍事と申しますか、安全保障あるいは平和維持のためにあったと思います、西欧では。最近は、経済成長のために非常に大きな貢献があったと思います。しかし、こういった傾向は今後とも続くと思いますけれども、これからは間違いなく、やはり、人類の生存、存続のために貢献する科学技術をつくっていかなければいけないと思います。その方向に日本も進まなければいけない、貢献しなければいけない。
具体的に何をしなければいけないかといいますと、これは前の国連の総長であったコフィ・アナンが言っていることですけれども、水、エネルギー、ヘルス、健康医療ですね、アグリカルチャー、食料ですね、それからバイオダイバーシティー、生物多様性、そして貧困の解決、このために科学技術は進むべきだということでございます。
 もちろん、これは日本の国内だけでできることでもありませんし、科学技術だけでできることではありませんけれども、これが新しい科学技術の進む道だろうと思っております。



○青木愛

 ありがとうございます。
 そうしますと、野依先生のさまざまな講演の記事など、資料等を拝見しますと、新しい社会的な価値の創出が大事だというふうにおっしゃられていまして、全米工学アカデミーのフォーラムでも、今一番大事なのは、教育された国民を最大限に確保し、多くの人々が価値を創造できるよう、自由と資金を与えることだという記述も拝見をいたしました。
 これからどう生存していくかというお話もあったんですけれども、オバマ大統領が二〇一四年の予算の中でクリーンエネルギーにも重点を置かれたという資料も拝見をいたしまして、この場では恐縮ですけれども、今課題になっています原発についてどんなふうにお考えかというのは、これもまた新しい価値の創造のきっかけになるのではないかというふうにも思うのですけれども、そのあたり、お伺いできれば、よろしくお願いいたします。


○野依参考人

 原発の問題は、たくさん政治的な問題も含んでおりまして、私が個人的に答えられることは限られております。しかし、いずれにしましても、電力というのは、今人間が生きていく上で一番大切なもので、これを何とか確保しなければいけない。先ほど二十のイノベーションシステムを申し上げたけれども、一番トップにあるわけですね。ですから、これがなければ現代文明は成り立たないということです。
 そのためにどうするかということでありますけれども、もちろん、原子力発電が理想的だとは申しかねますけれども、しばらくはつなぎで、やはり使っていく必要はあろうかと思います。そのために、安全について、やはり最大限の努力を払わなきゃいけない。そして、軽減していくならば、新しい再生エネルギー等、本気でやるという覚悟を、国、国民が持たなければいけないんじゃないか。そこには、人材の養成、そして資金の投入、こういうことがあろうかと思います。そういうことがセットになって、新しいエネルギーをつくっていくことが初めてできるかもしれない、そういうことだろうと思っております。



○青木愛

 ありがとうございます。大変貴重な御意見をいただいたと思っております。
 本当に、新しいエネルギーにかえていくという、国としての、国民としての覚悟といいますか、そこがまず第一にあって、そういう方針を定めていければこれにこしたことはないなと、私も現段階では思っているところでございます。
 最後に一問、白石先生にお伺いをさせていただきたいと思います。先ほどリニアコライダーのお話に触れられまして、私も何度か質問の方に取り上げさせていただいております。さまざまな効果はそれぞれから指摘をされているところでございますが、やはり日本に希望と活力を与えるまさに第三の矢の象徴的な役割を果たすのではないか、その予算もめり張りを持ってつけるべきではないかというふうに思っておるのでございます。
白石先生として、リニアコライダーの誘致ということについてどのようなスタンスでいらっしゃるのかということをお伺いしたいのと、先ほど、国会としてのもっと合理的な調査が必要ではないかというふうなお話もありましたので、ちょっとその辺も含めてお伺いできればというふうに思い
ます。よろしくお願いいたします。


○白石参考人

 経済学に、オポチュニティーコスト、機会費用という考え方がございまして、例えばリニアコライダーは、現在のエスティメートで見ますと八千億円くらいで、仮に日本に誘致するとすれば四千億円くらい日本政府が負担する、そういうプロジェクトだと理解しておりますけれども、機会費用の考え方を使いますと、この四千億円をリニアコライダーに投資するのがいいのか、投資すればそのときの経済的効果は例えばどれだけあるのか、再生医療に投資すればどのくらい効果があるのか、あるいは粒子線治療に投資すればどのくらいの効果があるのか。これを、幾つかのグループに試算させてみるというくらいのことをやれば、それだけでも随分、政策決定者にとっては参考になるんじゃないかと。
 そういうことを、特に大型のプロジェクトについてはぜひ調査するような機関、これはアメリカの場合にはコングレショナル・リサーチ・サービスというのがございますので、そういうものをぜひこういう機会につくることを考えていただければどうでしょうかというのが実は私が申し上げた
かったことで、リニアコライダーについては、ぜひこのオポチュニティーコストという考え方を入れていただきたいということでございます。



○青木愛

大変よくわかりました。具体的なアドバイスをありがとうございました。終わらせていただきます。