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  | HOME | >活動記録>>発言録2013年11月13日 衆議院文部科学委員会


「高校無償化法一部改正案」審議
    

○青木愛

 生活の党の青木でございます。
 本日が最後の質疑時間ということではございますが、私も続行した方がよいと思っております。
 この間、特に現場の教員の先生方を中心に、反対要請の声をたくさんいただいております。そうした声を受けとめながら、本日、質問に当たらせていただきたいと思います。
 この間、何度も取り上げられておりますが、まずは国際人権規約についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 国際人権規約は、世界人権宣言の内容を基礎としてこれを条約化したものであります。社会権規約と自由権規約から成り立ちます。
 この国際人権社会権規約、A規約の十三条二項(b)、(c)において、高校、大学までの無償教育の漸進的な導入が明記をされているわけでございます。
 まず、この国際人権A規約、これはどのような理念に基づいてそもそも作成されているのか。その理念をまずお教えいただきたいと存じます。


○山ア政府参考人

 お答えを申し上げます。
 国連憲章におきまして、人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて国際協力を達成することが国連の目的の一つとして規定をされております。この目的を達成するために、一九四八年、全ての人民と全ての国が達成すべき共通の基準を記した世界人権宣言が国連総会において採択をされております。
 社会権規約は、世界人権宣言に掲げられました諸権利のうち、個人の生活の保障が国家の果たすべき責任であるとの認識に基づいて、国の施策により個人に認められている権利、いわゆる社会権を規定するために、一九六六年に国連において採択されたものというふうに承知しております。



○青木愛

 この理念に基づきまして、この十三条二項(b)、(c)において、高校、大学までは漸進的に無償教育を進めよということが明記をされているわけでございます。
 日本は、一九七九年に批准をしたにもかかわらず、この部分、中高等教育への無償教育の漸進的導入の規定については、長年にわたって留保をしてまいりました。締約国百六十カ国のうち留保をしていたのは、日本とそしてもう一カ国、マダガスカルという状況でございました。
 民主党政権になって、その後半にやっと日本もこの留保を撤回いたしたわけでございますが、まず、それ以前、これができて五十年近くたちますけれども、これまで自民党政権の時代において、ずうっとこれを留保、保留をしてきたその理由は何かあったのでしょうか。


○山ア政府参考人

 御指摘の国際人権A規約の留保について、経緯を申し上げます。
 我が国では、従来より、後期中等教育と高等教育において私立学校の占める割合が大きく、国公立学校についても私学進学者との均衡等の観点から妥当な程度の負担を求めることとしているということを理由に、社会権規約締結時に、同規約の第三十二条二項(b)に言う「特に、無償教育の漸進的な導入により、」に拘束されない権利を留保した経緯がございます。



○青木愛

 私立が多かったということでありますでしょうか。
 先ほど細野委員からも質疑の中で諸外国の例が挙げられておりました。イギリスはまさに戦時中、戦争のさなかにこの無償教育を導入しているという背景がありました。アメリカも十九世紀に、州ごとにこの無償化を進めてきたということであります。最後に残ったのが二カ国で、やっと日本もそれを撤回したわけなんですけれども、これまで何で日本だけが独自路線を貫いてきたのか、そこに何か理由はなかったのでしょうか。
 私立とか公立とかということではなくて、よほどの理由があったのではないかなと率直に思ったわけでございますが。


○山ア政府参考人

 外務省の立場から、一九七九年に日本がこの規約を批准したわけでございますけれども、その当時の留保をした理由というのは、先ほど申し上げましたように、私学進学者との均衡等の観点から、妥当な程度の負担を求めることとしている等の理由により留保を付したというふうに承知しております。



○青木愛

 何か率直に、その程度の理由なのかというのが今の感想であります。
 いずれにしても、今回の改正で所得制限を初めて設けるわけでございますが、高校教育の無償化をまず廃止したということは大きな後退だとやはり言わざるを得ないというふうに思います。原則無償を撤回して原則有償にするわけでありまして、そして、低所得者層で支援を受けたい者は申請せよ、手続せよということでありますので、これは教育を保障するものではないというふうに思っています。無償から有償への理念の変更であるというふうに思います。
 国際人権規約の後退と考えてよいか、大臣の御答弁をお願い申し上げます。


○下村国務大臣

 国際人権A規約第十三条において「中等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、」「すべての者に対して機会が与えられるものとすること。」が規定されているわけであります。高校無償化制度への所得制限を導入しても、教育費負担の軽減に努める方向が維持され、かつ、実際の施策が中長期的に見てその方向に沿ったものであると認められるものであれば、人権規約に違反するものではありません。



○青木愛

 財務省の担保のことももちろんです
 し、これは理念が百八十度変わっているというふうに思うわけであります。その点については、大臣、どうでしょう。無償が原則有償に変わったということなんですよね。無償にしたければ、あらゆるプライベートな、所得から、所得証明書が出せない場合はどういう事情があるのかという、それまで証明をしなければ国は教育を保障しないということとも言えると思うんです。無償が有償に変わるということは、理念が変わるということと受けとめてよろしいでしょうか。
 これは、民主党の無償の改正案ではなくて、新法でやるべきではないかというふうに思うのですが。


○下村国務大臣

 高等教育、つまり大学教育においては無償教育が行われているわけでは今はないわけでありますけれども、授業料減免や奨学金の拡充などの経済的負担軽減の状況を踏まえ、ここにおいても留保撤回がなされたわけであります。
 むしろ、高校については、今回の見直しは、文科省としては、より効果的に本制度を実施する観点から、現行予算を活用し、低所得世帯への支援を重点的に行う等の改善を行うものであり、人権規約の趣旨をさらに前進させるものと考えております。



○青木愛

 撤回するものではないということでありますけれども、何度言ってもいたし方ないんですけれども、明らかにこれはA規約の後退である、理念の変更であると申し上げておかなければならないというふうに思います。
 ましてや、低所得者の対策にはその財源を高所得者に今求めているわけでありますので、私は全く、今大臣がおっしゃったことについては、大臣のお考えもあるだけに本当に残念でならなく、この内閣のこの下村大臣がこの無償から有償への転換をしてしまったということに、大臣のいろいろなお考えはあろうかと思いますけれども、やはり結果とするとそういうことになろうかと思います。
 そして、来年またいろいろな制度改革がある中で、こんなに急いでこれを推し進めなくても、その中できっちりと仕組みをみんなで考えればよいのではないのかなというふうに思うわけでございます。その点、指摘だけさせていただきたいと思います。
 質問を移らせていただきます。
 日本の終戦時など、戦争で国土が荒廃しインフラが破壊された状況では、社会インフラの整備に予算を投入し、経済、産業を興すことは大きな意味がありました。しかし、今日の日本のように経済的豊かさが先進国の先頭レベルに達した国は、予算の投資先は人に向かうべきであると考えております。社会の豊かさを牽引する役割がハードからソフトへと転換をしているからでございます。
 実際、ヨーロッパでは、高校教育のみならず大学教育まで無償化が実現をしています。自己責任と自由競争を追求するアメリカでさえも、高校教育は無償、大学は奨学金制度など、日本よりはるかに進んでいます。
 現政府は、国土強靱化政策と銘打って、再び公共事業に多額の予算を投入しています。一方、教育予算については、公私間格差の是正、低所得者対策といって、その財源を高所得者に求めようとしています。今の政府が行っているのは、途上国的発想だと言わざるを得ません。
 一つの家庭に例えれば、家は立派な家を建てて、子供には、家にお金がかかるから教育にはお金がかけられないんだと言っているのと同じことだというふうに思います。親であれば、ほかは我慢してでも子供にはいい教育を受けさせたいと思うのが親心だというふうに思っております。
 子供は社会の宝だなどと言いながら、子供にはお金をかけない、教育に予算をつけない。おかしいと思われませんでしょうか。


○下村国務大臣

 民主党政権のときにコンクリートから人へというのがキャッチフレーズになっておりましたが、私はコンクリートも人も必要だというふうに思っております。それは、三・一一の復旧復興の中で、我が国は諸外国に比べても大変に地震、災害等が多い国でありまして、これからも南海トラフや首都直下型の地震が起きる可能性がある中で、今から人の命とそして財産を軽減させるための公共事業、これは必要なことだというふうに思います。
 二十五年度の国の一般歳出が約五十四兆円ある中で、公共事業が多い多いというふうに御指摘がありましたが、実際のところ五兆二千八百五十三億円で九・八%、決して多い数字とは思っておりません。文部科学関係の文教関係予算が、四兆六百六十一億円で七・五%でございます。
 ただ、御指摘のように、公共事業はともかくとして、文部科学予算は、私は率直に言って、これからもっと力を入れるべきだというふうに思います。それはやはり、人づくりが国づくりであり、国の根幹を形づくる最重要政策である教育の投資というのは、個人一人一人だけでなく、社会の発展の礎となる未来への先行投資と今から考えていく必要があるのではないかと思います。
 これから一人一人の国民の能力を最大限伸ばしていくチャンス、可能性を提供する、一人一人の生産性を高める、これは我が国が発展していくためには不可欠のことでありますから、そのために、地球規模のさまざまな課題に強い問題意識を持って、その解決に必要な創造的な思考力や行動力を兼ね備えた人材を今まで以上にしっかりと教育の中で投資をして育成するということを、これは新たに国家の明確なビジョン、理念として位置づける、そういうときに来たのではないかというふうに思います。
 そのためにも、教育再生への取り組みもさらに加速させ、新たな財源の確保方法も検討しつつ、教育予算の拡充を最重要課題として取り組んで、世界トップレベルの教育立国構築に向けてしっかり対応してまいりたいと思います。



○青木愛

 ありがとうございます。
 今大臣がおっしゃったことも含めてのまた質問を何点かさせていただきたいと思います。
 まず、先ほど来質問にも出ておりますが、この九百十万円の所得制限を入れた場合の申請の手続上のことなんですが、両親や教師にいろいろと面倒な負担を課すことになりますけれども、何らかの理由で親の所得証明書を入手できない場合、父親が失踪していたりですとか離婚調停中であるとかさまざまな理由でコンタクトがとれない状況にある場合、このような家庭に対してはどのような配慮が考えられているのか、お伺いをいたします。


○前川政府参考人

 ただいま御指摘のありましたような事情につきましては、やむを得ない事情があるかどうかということを確認して、それなりに対応していく必要があると考えております。
 所得の把握に当たりましては、先ほど来の御答弁で申し上げましたとおり保護者の市町村民税所得割額を合算することで判断していくことにしているわけでございますけれども、現行の制度におきましても、就学支援金の加算の要件に当たるかどうかの判断に当たりまして、ドメスティック・バイオレンスでありますとか児童虐待でありますとか、そういったやむを得ない理由によりまして、保護者のうちの一方または双方の証明書類が提出できないというような場合につきましては、それぞれの当該事情を明らかにした上で、片方の保護者または本人の所得のみによって判断するということもできることになっております。
 このような取り扱いは新制度でも変わることがございませんので、都道府県に対しましても改めて周知してまいりたいと考えております。



○青木愛

 そうなんですね、今御答弁にありましたように、その当該事情を明らかにしなければならないわけであります。
 安倍内閣は、国が秘密とすべき事項に関しては、特定秘密保護法案で厳罰をもって保護することには大変熱心でございます。しかし、高校生が授業料の免除を受けるためには、家庭の特殊な事情、内容によっては、その家庭にとっても、家族にとって誰にも知られたくない情報を第三者に開示しなければならない、可視化を要求されるわけであります。それが嫌なら支援を受けることができないということであります。
 安倍内閣は、国の権力を強化するということには大変積極的でありますけれども、国民の個人情報を保護することに対しては大変配慮が欠落しているなというふうに思っています。このような姿勢は安倍内閣の随所で今見られます。安倍内閣は国家が第一、国民は二の次という印象を受けておりますが、そのことについて、下村大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。


○下村国務大臣

 特定機密の保護に関する法律案というふうに、特定なわけですね、全てが機密ということではありません。我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについてその漏えいの防止を図ることを主な目的とするものでありまして、今回の高校無償化制度の見直しとは全く別次元の問題であるというふうに思います。
 所得確認書類の取り扱いに当たっては、これは御指摘のように個人情報を保護しなければならない、当然のことであります。その取り扱いについては、引き続き都道府県に対し、生徒、保護者のプライバシーに十分配慮するよう求めてまいります。



○青木愛

 そして、自民党の憲法改正草案を拝見いたしました。第二十六条に、第一項、第二項はほぼ変わりがありませんけれども、第三項が新設をされていました。その第三項に何が書かれていたかというと、「国は、教育が国の未来を切り拓く上で欠くことのできないものであることに鑑み、教育環境の整備に努めなければならない。」とありました。
 これを読みますと、自民党の考える教育とは、国の未来を切り開く上で欠くことのできないものと位置づけをされています。すなわち、教育とは、子供たちの教育権、学習権を拡大して子供たちの可能性を開花するためのものではなくて、あくまでも国の未来を切り開く人材育成なのであるというふうに読み取れるわけであります。
 自民党安倍内閣においては、この教育においてもやはり国家が第一なんだ、国民はそのためにあるんだという考え方がここにも貫かれているように思うわけでありますが、この自民党の考える教育というのはどういうものなのでしょうか。


○下村国務大臣

 青木委員の解釈は曲解している解釈としか言えません。
 改めて、この憲法第二十六条に三項がなぜ追加になったのかということについてちょっと説明を
 申し上げたいと思うんですが、憲法第二十六条において、「全て国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する。」、第二項が「全て国民は、法律の定めるところにより、その保護する子に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、無償とする。」、現行法とほとんど同じような案文の中で、御指摘のように第三項でさらに、「国は、教育が国の未来を切り拓く上で欠くことのできないものであることに鑑み、教育環境の整備に努めなければならない。」、これを明記したわけでございます。
 このことによって、まさに我が国における教育のさらなる公的投資に対する、憲法で保障することによってより促進させるという大義名分を、責任を明確にしたというふうに思っております。
 我が国の社会の発展に向けて人材育成は極めて重要なことでありまして、国民が充実した教育を受けられるということを権利として明確に定める、そのことを国の義務とするということによって、我々は、大学教育まで含めてできるだけ公的支援をさらに拡大することによって、憲法で保障されたことを担保にすることによって、教育投資に対する促進の糧にもしていきたいというふうに考えておりまして、教育にさらに力を入れるということであります。
 一人一人の豊かさの享受は教育によってさらに可能性が拡大していく、一人一人の豊かさが結果的には国の豊かさにつながる、そういう根本からの憲法理念としての教育の位置づけです。



○青木愛

 下村大臣のおっしゃることはわかるので、一人一人の豊かさがあってそれが国の未来につながっていくという方向であればわかるのですが、この自民党の憲法草案はわざわざこれを新設したというところに、またかという思いがしたわけなんです。社会保障もそうでした。やはり自助自立を強調されている。
 この間の、安倍内閣に私は期待するところも実はあったんですけれども、安倍総理の行動力に、もちろん原発以外はですけれども。ここへ来て、次から次へと、憲法改正、集団的自衛権、特定秘密だとかいろいろなことが出てきて、経済対策もちょっと見えにくくなっていて、とても今、国家権力を強化する方向に行っているのではないかというふうに率直にそういう印象を受けるものですから、この自民党憲法草案を拝見して、教育にまでも及ぶのかというふうに思ったものですから、質問させていただきました。
 下村大臣の考え方、思想をぜひ貫いていただきたいというふうに思いますし、今回、無償が有償に変わるというこの理念の大転換というのは、これは、本来、下村大臣はそう本当に思っていらっしゃるのかどうなのかということをここで突き詰めてもしようがないんですけれども。
 この委員会でこれから採決になるということも決まっておりますので、この質疑がよりよい方向に、この委員会の役割というか、そういうものも今後とも考えていかなきゃいけないのかなというふうに思うところであります。
 ぜひ、子供の幸せ、子供の未来のために教育があるということで、これからも大臣の御尽力をお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。


「高校無償化法一部改正案」反対討論
    

○青木愛

 私は、生活の党を代表し、反対の立場で討論いたします。
 反対の理由の第一は、高校、大学までの段階的な無償化を定めた国際人権A規約の適用を長年にわたり留保してきた問題を、民主党政権になって、ようやく昨年撤回しました。しかし、今回の改正案は、原則無償を撤回し、原則有償、低所得者層で支援を希望する者は申請せよということで、無償から有償への理念の変更であります。高校教育無償化の大きな後退が反対の理由です。
反対の第二は、所得制限を導入することにより、子供たちが同じ条件で教育を受ける権利がゆがめられることです。
 保護者の所得の高低に応じてクラスの中に授業料を払う生徒と払わない生徒ができ、精神的に敏感な高校生たちに無用な心労を感じさせる環境をつくってしまうことです。
 反対の第三は、父親が失踪しているとか、離婚調停中が原因で夫婦が別居しているなど、複雑な家庭環境にある子供が授業料免除の手続を行う場合、所得を初め誰にも知られたくない家庭状況を第三者に開示しなければならないケースもあるということです。
 第四に、諸般の事情で手続をしない場合は授業料は免除されず、その結果、経済的理由で学業を断念せざるを得なくなることです。
 第五に、安倍内閣に強く貫く国家が第一という考えが、この法案の根幹にも存在することです。
 最後になりますが、子供教育の健全な拡大を強く希望し、本法案への反対討論といたします