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  | HOME | >活動記録>>発言録2014年3月12日 衆議院文部科学委員会


私立学校法の一部改正案に関わる審議
    

○青木愛

 生活の党の青木でございます。
 私立学校法の一部を改正する法律案について質問をいたします。よろしくお願いいたします。
 現在、私立学校に在学をする学生生徒の割合は、大学、短大で約八割、高等学校で三割、幼稚園で八割、専修、各種学校で九割以上と、私立学校は、多様化する国民のニーズに応じた特色ある教育研究への期待も高まり、我が国の学校教育の発展に質、量ともに重要な役割を果たしております。
 一方、今なお繰り返される不祥事は、たとえ一部でありましても、私立大学、私立学校全体の社会的信頼を損なうことになり、不祥事の根絶は、私立学校全体にとっても大きな課題となっています。
 私立学校を設置する学校法人には、その公共性を担保するために、昭和二十四年に制定されました私立学校法でさまざまなルールが定められております。そして平成十六年には、やはり、私立大学での相次ぐ不祥事を受けまして、制定以来初めての私立学校法の大幅な改正が行われました。
 具体的な改正内容は、理事会の制度の改善、監事制度の改善、評議員会制度の改善、情報公開の推進、この四点を大きな柱とするものでした。しかし、改正されたこの私立学校法では不祥事の発生を防止できないということが、今回のまた事件で明らかになったわけでございます。
 私立大学のこの不祥事は、先ほどから指摘がありますが、理事会による大学への介入や支配、理事長のワンマン支配、私物化された運営、こうした中で発生をしている場合が多く、現行の私立学校法では、理事会体制が刷新されない限りは、例えば、投機的な資産運用で大学に巨額の損害を負わせた学校法人の役員が法的責任や賠償責任を追及されることもありません。監事、評議員会の権限は大変弱く、理事会の体制を刷新することは極めて困難であると指摘をされています。
 このような点から、今回の法案の改正は重要な問題が生じてからの対応策となっておりますが、これとあわせて、そもそもこうした重大な問題が生じないように、根本的な解決を図るための抜本的な私立学校法の改正が必要だと考えます。
 もちろん、健全に運営をされている学校法人の自主性を損ねること、また、圧迫するものであってはなりませんけれども、学校法人制度そのものに踏み込んだ私立学校法の改正もやはり必要なのではないかと考えますが、下村大臣の御所見をお伺いをいたします。


○下村国務大臣

 今回の改正案は、自主的、自律的な管理運営を重視する私立学校制度の趣旨を逸脱、濫用した異例な事態への対応が必要な状況も生じたことから、所轄庁が異例な事態に的確かつ効果的に対応できるための制度を設けるというものにしたものであります。
 しかし、御指摘のように、今回の制度改正を議論した大学設置・学校法人審議会のワーキンググループにおいて、法人運営の透明性の一層の向上や法人内部のガバナンスのさらなる強化など、学校法人制度の充実全般についても議論をされたところでございます。
 私学の自主性の観点も十分に踏まえつつ、さらに議論を深め、そして、これと並行して、今国会で大学ガバナンス改革、先ほど申し上げましたが、学長の選考の仕方あるいは教授会のあり方等を含めた法案を今国会にぜひ提出をさせていただきたいと、今用意をしているところであります。



○青木愛

 前向きな検討と捉えさせていただきますが、平成十六年の四本柱でありました改正内容、前進をしたものの、やはり問題が残されていたわけであります。それが明らかになったわけであります。
 その問題とは、理事長が理事全員を任命することが可能であったり、監事を監査される側の理事会が任命をしていたり、役員が学校法人に重大な損害を発生させても責任を追及する枠組みが未整備であったり、財務情報の公開が閲覧にとどまっていたり、こうした問題点が考えられるわけでございます。
 今、大臣からも御答弁にございました大学設置・学校法人審議会学校法人分科会の八月の報告を拝見いたしますと、学校法人制度のあり方全般にかかわる論点を展開することとは今回はしていない。ただ、制度の改善の視点として、その必要性や有効性に留意しつつ、実情に応じて論議が将来的に深められることも有意義と考えられるとございました。
 若干、先送りの感も否めないわけでございますけれども、今回の法案改正とあわせて、ぜひ、抜本的な学校法人のあり方についても踏み込んだ取り組みをお願いしたいというふうに思います。
 再度御答弁いただけますでしょうか、今の点を踏まえて。


○下村国務大臣

 御指摘の点はそのとおりだというふうに思います。
 一方で、私学の自主性の観点、これも十分に担保する必要があるというふうに思いますし、一方で、厳しいグローバル社会、国際社会の中で、我が国の大学が少子高齢化という現実的なハンディキャップを負いつつ、質、量ともに充実をしながら、世界の中で伍していくような人材育成をしていくための大学のあり方あるいは私学のあり方等についても、法整備を考えていく時期に来ていると思います。



○青木愛

 ありがとうございます。問題点の認識は共有させていただいているというふうに思いました。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、今回の法案の中で幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 所轄庁の唯一の制度的手段であります解散命令に至る以前にその改善を促すための段階的な手段の整備の必要性からこのたびの審査に至ったと認識をしておりますが、質問が重なりますけれども、まず、どのように問題のある学校法人を把握されるのかをお伺いしたいと思います。
 文科大臣が所轄する学校法人数は六百七十一、都道府県所轄法人数は六千百五十三、準学校法人数は一千百十九法人に及びます。これだけの数がある中で、どのように問題ある学校法人を把握されるのか、そして、現在どの程度把握をされているのか、問題を有する学校法人は今幾つくらいあるのか、その点についてお伺いをさせていただきます。


○常盤政府参考人

 お答え申し上げます。今回の改正によりまして新たに規定をする報告及び検査の必要性等は、私学助成を受ける学校法人が所轄庁に届け出ます財務関係書類など、所轄庁がさまざまな情報を総合しつつ、みずからの権限と責任において適切に判断をすることになると思います。
 具体的には、私学助成の交付を受けている学校法人から私立学校振興助成法に基づきまして届け出される財務計算に関する書類であるとか、あるいは、学校法人がホームページ等で公表している財務計算に関する書類もございます。また、監事が学校法人が法令あるいは寄附行為等に違反する重大な事実を発見した場合には、所轄庁への報告ということもございます。また、関係者による情報提供ということもあろうかと思います。こういうものを通じて把握をしているという状況でございます。
 これらのことからさらに具体の情報が必要な場合には、当該学校法人に対しまして任意の情報提供等を求めることとなり、これによりがたい場合には、今回の改正により創設される報告徴取、立入検査によることとなるわけでございます。
 先ほど来、措置命令を講じる場合等についての、どういう例が考えられるのかということについても御答弁をさせていただいたところでございます。
 昨年、堀越学園に解散命令ということになりましたが、現時点において私どもとして、そのような状態に立ち至っているというものは把握をしていないというのが現状でございます。



○青木愛

 問題を有している学校法人がみずから正確な情報を申し出るというのもなかなか考えにくいわけでありまして、多くは、教職員による問題提起であったり、また、組合による取り組みがあったり、あるいはまた、定期的な文科省の現場の視察といいますか、情報報告を求めているかとは思いますけれども、これだけの数があって、本当にまず立ち入りの前の把握ができるのかどうかというのは大変疑問に思うところでもございます。
 それゆえに、やはりこうした問題が起こらない、法律の抜本的な改正が必要ではないかというふうに考えるところでございます。
 もう一点用意した質問がございますので、重なりますが、質問をさせていただきます。
 改正案の第六十条一項でございますが、「所轄庁は、学校法人が、法令の規定、法令の規定に基づく所轄庁の処分若しくは寄附行為に違反し、又はその運営が著しく適正を欠く」、この「著しく適正を欠く」というのはどういうことなのか。「と認めるときは、当該学校法人に対し、期限を定めて、違反の停止、運営の改善」、そこまではわかりますが、「その他必要な措置をとるべきことを命ずることができる。」とございます。
 「運営が著しく適正を欠くと認めるとき」というのはどういうことを指すのか、また、「その他必要な措置」というものもどういうものを指すのか、極めて曖昧でありまして、所轄庁の行政権限の濫用につながる危惧もございます。また、審議会委員の判断に左右されるのではないかという指摘もございますけれども、その二点について改めてお伺いをさせていただきます。


○常盤政府参考人

 今回の改正では、所轄庁が措置命令を行い得る場合といたしまして、他の公益的な法人制度における同様の措置も参考として規定を設けたところでございます。
 具体的に措置命令を行い得る事例といたしましては、学校の運営に必要な資産の不足により、教育研究活動へ支障が生じている場合や、理事会において必要な意思決定ができず、教育研究活動への支障や学校法人の財産に重大な損害が生じている場合を想定しております。
このうち、運営が著しく適正を欠く場合ということでございますけれども、明白に法令違反とまでは言えない状態ではあるけれども、私立学校の設置者として求められる要件に照らして適正を欠く場合で、具体的には、理事の地位をめぐる訴訟により、必要な予算の編成や事業計画の策定がなされず、教育研究活動に支障が生じている場合、あるいは、理事が第三者の利益を図る目的で学校法人の財産を不当に流用し、学校法人の財産に重大な損害を与えている場合などが想定されるというふうに考えてございます。
 また、違反の停止、運営の改善、その他必要な措置ということでございます。
 改正法第六十条に規定する措置命令を行う場合の具体的な例といたしましては、違反の停止や運営の改善を図るものとして、私立学校法第二十五条に定める学校法人として必要な資産を有していない場合に、改善計画を作成して必要な財産を備えるよう命ずること、あるいは、理事が未充足である場合に速やかに理事を選任するよう命ずることなどが考えられます。
 さらに、その他必要な措置でございますけれども、財政状況の悪化により教育活動の継続が困難となり、解散も避けられない学校法人がなお学生の募集を行おうとする場合に、新たな入学生の募集の停止を命じることなども想定されるものと考えております。



○青木愛

 ありがとうございます。今回のこの重大な問題が起きてからの対応策と文科省の権限強化だけでは、不祥事を起こさない仕組みづくり、抜本的な改革にはなかなかならないだろうというふうにも思います。
 ぜひ、それとあわせて、私立学校法の弱点に焦点を合わせていただきまして抜本的な改正の速やかな検討もお願いをし、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。