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  | HOME | >活動記録>>発言録2014年4月9日 衆議院文部科学委員会


大臣所信に対する一般質疑
    

○青木愛

 生活の党の青木でございます。よろしくお願いいたします。
 ことしの二月に、日本原子力研究開発機構、JAEAの東海研究開発センター原子力科学研究所を視察させていただきました。
 この施設では、私がこの文科委員会で何度か取り上げさせていただきました核変換技術、高レベル放射性廃棄物の大幅な有害期間の短縮、そして有害度の低減への貢献をし得る核変換技術に関する施設群を見学させていただきました。大井川教授を初め、たくさんの研究員の方々にいろいろ御指導いただいてまいりましたが、まず気になりましたのは、施設の古さでございました。
 鉛ビスマスの流動試験を行っています高温工学特研を見学した際に、その古さが大変気になりお話を伺いましたところ、昭和五十三年の竣工で築三十六年ということでございました。また、その施設に限らず、原子力科学研究所の建物は、古いものでは昭和三十二年に竣工されたものなど、古いものを耐震補強しながら利用し続けているということで、震災でも一部の建物が使用できなくなるなど大変不自由をしているというお話も伺ってまいりました。
 何よりも、研究者の方々が安全に、そして安心して研究を続けていただくことが大切であり、研究環境を整えるための適切な予算措置ということが必要だと思いますが、まず御所見をお伺いさせていただきます。


○田中政府参考人

 原子力研究開発機構におきましては、各種研究をしてございます。特に核変換技術ということについては先進的な研究を進めてきているというところでございます。
 この研究施設につきましては、確かに老朽化ということが進んでいるものもございますけれども、そこは技術の進展に伴いまして必要な措置を適宜やっていくということにしていきたいというふうに考えているところでございます。



○青木愛

 ぜひよろしくお願いいたします。
 そして、この予算措置に関係をいたしまして、平成二十五年度の補正予算と二十六年度の当初予算におきまして、この核変換技術について例年の予算に比較して格段の措置が図られたというふうに思っておりまして、このたびの政府の対応を高く評価いたしております。
 その使途につきましてお伺いをしたいと思います。
 二十五年度の補正予算で八億、そして二十六年度の当初予算でも八億、合計十六億ということでございますが、もう少し具体的な内訳をお伺いしたいのと、このADSの最終的な建設予定地も見せていただきました。平成二十七年度以降の検討とされています核変換実験施設の建設費、これの大まかな総工費とその見通しについてお伺いさせていただきます。


○田中政府参考人

 先生今御質問いただきました予算の使途でございます。
 まず、平成二十五年度補正予算、総八億でございますけれども、そのうちの五億円は、核変換技術の工学的実証、成立性ということを検討するための要素技術の研究開発でございます。また、その残りの三億円につきましては、それに使います燃料というか、核変換の対象になりますマイナーアクチノイドという種類の核でございますけれども、そのマイナーアクチノイドの分離、あるいは核変換用の燃料の作成ということに必要な要素技術、この研究開発をしてございます。
 また、二十六年度の当初予算、これも全体としては八億円でございますけれども、そのうちの六億円につきましては、分離変換サイクルを研究するということの経費でございます。また、一・五億円が核変換実験施設にかかわりますシステム概念ということの検討に充てさせていただきたいというふうに思ってございます。
 将来のことということかもしれませんけれども、施設全体でございます。
 この施設全体につきましては、これから検討するということでございますけれども、昨年十一月に専門家が取りまとめました核分離、核変換に対する報告書というのができてございます。その報告書の中には、日本原子力研究開発機構においては、その建設のために約二百二十億円というところの見積もりをしているという記載がございます。



○青木愛

 ありがとうございます。今御答弁の中にありました、まさに核変換を行うまず第一歩の研究課題であります、高レベル廃液中の長寿命核種でありますマイナーアクチノイドの分離回収、この群分離の技術開発、そして核変換用の燃料の製造と処理、この研究を行っていますNUCEF、バックエンド研究施設であるBECKYの中も視察をさせていただきました。
 放射線管理区域でありますので大変厳重に管理をされていまして、その施設を出るときも、手洗いをして、異常がないかどうか体を通して確認をしてから外へ出るということで、カメラも録音機も持ち込めない場所でございました。
 実際、その研究作業の様子を拝見いたしました中で、グローブボックスという、まさに高レベル放射性物質が入ったボックスに装着されたゴム手袋のようなものを通して研究作業を行っていらっしゃいました。その中には当然ウランも間近にありました。
 その作業時にリングバッジをつけておられるわけですけれども、これは指の被曝量を測定するための線量計の一種だということで、指輪のような形をしているわけですけれども、決して放射線の遮断のためにつけるのではなくて、あくまでも、被曝そのものを軽減することはできないのだけれども、被曝量を把握して過度の被曝を防ぐことができる。そのためにこうしたリングバッジをつけて、ゴム手袋をつけて実際にこうした物質を扱っている、そういう中で研究が行われているということでございました。
 こうした研究者の皆様や技術者の方々の安全性の確保とともに、今後この分野を担っていただける研究者、また技術者の育成ということについて、これはJAEA任せではなくて、政府としてもどのように今後考えていくおつもりなのか、お伺いをさせていただきます。


○田中政府参考人

 まず、安全確保でございますけれども、安全確保は大前提ということでございます。特に研究者の方々は直接いろいろそういうところに触る機会ということがございますので、そこは決して安全性上の問題がないように、先生もごらんいただいたようなNUCEFの中にはグローブボックスとかいうものもきちっと備えてございますし、安全確保には万全を期していくというふうに考えているところでございます。
 また、人材育成のことについても御質問をいただきました。 原子力人材の育成確保ということにつきましては、核変換の技術開発ということはもちろんのことでありますけれども、原子力施設の安全確保あるいは廃炉等々につきましても極めて重要な取り組みだというふうに思っているところでございます。
 このため、文部科学省としては、平成二十二年度から国際原子力人材育成イニシアティブということを開始してございます。このプログラムは、学生あるいは若手研究者の方々を対象といたしまして、産学官の原子力関係機関の連携のもとに、大学あるいは研究機関にある原子炉施設あるいは大型実験施設ということを活用して、原子力人材の育成を支援しているところでございます。
 現下の原子力を取り巻くいろいろな状況から、平成二十五年度における原子力関係学科の学生というのが学科あるいは専攻でどんどん減っているということは御指摘のとおりでございまして、震災前の二十二年度と比較すると全体としては二割少なくなっている、特に、学科のところでは入学者は三・五割も減少するというような状況になってございます。
 このような学生の方々の原子力離れということがこれからも一層深刻化しないように、文部科学省としては今後とも最大限努力をしていきたいというふうに思いますし、核変換技術のように革新的な取り組みということを積極的に進めていくということによりまして、若い人材にもこの分野に多く参加をしていただくというような機会をふやしていきたいというふうに思っているところでございます。



○青木愛

 そして、このJAEAでは、原子力施設の廃止措置に必要な技術開発も行っておられます。
 JPDRというのは日本で初めて原子力発電に成功した動力試験炉でございますが、これは解体をして、今きれいな芝生に、グリーンフィールドになっております。そして、日本原子力発電株式会社の東海発電所と福井県敦賀の「ふげん」という新型転換炉原型炉、これも現在解体中であるということを伺っています。現段階で、より安全で、コストがかからず、廃棄物が少ない形で、今持ち得るベストな方法で解体作業が進んでいるというふうに伺っております。こうした経験を積みながら、より高度な技術開発に向けて研究が継続されていくものと思います。
 今、福島につきましては、炉心の溶融、デブリの処理など、また別途廃炉に向けた研究が行われていますけれども、こうした廃炉技術、あるいは核変換に象徴される高レベル放射性廃棄物の処理、こうした技術で、これは我が国だけではなくて原子力発電を稼働させている全ての国に日本が貢献し得る分野になろうかというふうに思っておりますし、その使命があるのではないかというふうに思います。
 その点について御所見をいただければ、よろしくお願いいたします。


○下村国務大臣

 核変換技術は、原子力エネルギーを利用している各国に共通の課題である放射性廃棄物の減容化及び有害度の低減に有効な技術であり、世界の英知を結集して進めていくことが重要であるというふうに考えております。
 我が国は、原子炉工学や核燃料サイクル技術、加速器など、核変換技術に必要な分野においてすぐれた知見を有しております。文科省としては、我が国のこうした知見を生かしつつ、効率的かつ効果的な研究開発を行う観点から、同様に先進的な技術を有するフランスやアメリカと国際協力のもとで実施している研究開発について、引き続きしっかり取り組んでまいりたいと思います。



○青木愛

 このような研究は、世界各国と競争ではなく、協調して進めていくべきと考えております。
 東海研究所視察の折にも、ベルギーが中心となって行っていますミラー計画についてもお話を伺いました。ベルギーほか関係各国と調整しながら、日本としても適切にかかわっていくべきだというふうに考えております。ぜひ、J―PARCの核変換実験施設の整備とベルギーのミラー計画、この連携をして、二〇三〇年代にADSを実用規模にできる知見と経験を得るということが当面の目標だというふうに伺っておりますので、その方向でぜひ政府としても後押しをしていただければというふうに思います。
 最後、その点についてお伺いできればと思います。


○田中政府参考人

 加速器を用いた高レベル放射性廃棄物の処理処分、高速炉を用いたもの、あるいは加速器を用いたものというのはいろいろございます。特に、加速器を用いたものというのは、先生御指摘のようなベルギーの国際協力ということが今計画として進んでいるというところでございます。
 これからも、国際協力あるいは国際連携ということを念頭に進めてまいりたいというふうに思っているところでございます。



○青木愛

質問を終わります。ありがとうございました。