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  | HOME | >活動記録>>発言録2014年4月25日 衆議院文部科学委員会


地方教育行政法関係の政府案と民主・維新案の2法案の質疑
    

○青木愛

 生活の党の青木愛でございます。本日は、先日、仙台の公聴会に参加をいたしまして、その際に伺った御意見を中心に質問をさせていただきます。
 まず、奥山仙台市長から伺った御意見の中に、仙台市は政令指定都市でありますので、政令指定都市の教育委員会が持っている事情とほかの基礎自治体とは全く違うということの指摘がございました。
 仙台市の教育委員会は、教員の人事権を持ち、また、各学校の校長はもちろん、各職員の人事異動も仙台市教育委員会として行っていることでございます。また、事務局体制も充実に努めており、各部局も整備をされていて、長年にわたって、指導主事等、直接学校運営にかかわれる、携われる能力を持った教職員の育成に努めてきたということの御報告を伺いました。
 一方で、これら人事権もしくは指導主事等の充実を図ることが困難な基礎自治体の教育委員会もあるということの指摘があり、この教育委員会制度の運用は、都道府県、政令市、中核市、市町村、各自治体の権限と財政力によって大きく異なるということの指摘がございました。
 役場の組織そのものが百人以下の規模の中では、教育行政も他の行政も何もかもが混然一体となって行わなければならず、余りその理論的な整合性であるとか、そういうことにとらわれ過ぎず、むしろ、小さい中でそのメリットをどう生かして子供たちによりよい環境を与えていくかということを考えることが必要だという御指摘があり、青木陳述人からも、やはり制度と運用を区別して、運用状況の把握と検証が何より大事だという指摘をいただいてまいりました。
 これから新制度を導入するに当たって、この運用状況の把握あるいは検証、現時点でどのように行ってこの法制度の整備に向けて取り組みを行っているのか、お伺いをさせていただきます。



○前川政府参考人

 今回の法案の作成に当たりましては、現行の教育委員会制度がどのように動いているかということにつきましては、各種データによりまして検証したところでございます。
 市町村の教育委員会におきましては、教育委員会の開催頻度が月一回程度であるというようなことでありますとか、都道府県におきましてもこれが月二、三回という、そういった開催頻度の問題でありますとか、あるいは、教育委員会が会議を持つ場合の会議の持ち方でありますとか、また、教育委員会と教育長との関係、教育長と首長との関係などにつきましても、現状の分析を踏まえまして今回の法案を作成したところでございます。



○青木愛

 今後、こうした人手不足の町村あるいは離島、こういう地域に対して国としてどのような対応を行っていくのか、お伺いをしたいのですが、生活の党といたしますと、地方公共団体または国が設置する学校において義務教育に従事する教員は、全国的な見地からその人材が確保されるよう、国家公務員の身分を有するものとするという基本方針を定め、現在もその考えを持っているものでございます。
 こうした生活の党の考え方について、下村大臣の現時点での率直な感想でよろしいんですけれども、ぜひ御所見をいただければ大変ありがたいのと、今後、こうした人手不足の地域に対してどのように対応されていくのか、地域の多様性に鑑みてその裁量を残しておくとか、あるいは、人材の手当てを国としてしていくのか、あるいは、人事と財源ともに地方に移譲していくそうした考えもあるのか、地域によって異なる事情の解決をどのように図っていこうとこの運用の中で考えておられるのか、その二点についてぜひお聞かせをいただければというふうに思います。


○下村国務大臣

 生活の党の教員に対する考え方については、共有できる部分がこれはあります。
 これは自民党でも、今三分の一の国庫負担補助ということでありますが、これを全額にすべきだという議論は、文部科学部会等で既に提起をされているところでもございます。
 つまり、義務教育でありまして、義務教育については国が責任を持つ、その責任の部分については財源を持つ、責任を持つという究極のあらわれとして一〇〇%国庫負担にすべきではないか、こういう議論はありますが、一方で、今は地方分権の流れの中で、教育については、設置主体も地方自治体が設置主体ということでありまして、この整合性をどうするかという意味で、国家公務員まで引き上げるということについては、行財政改革の観点からこれはいろいろな議論がありますが、ただ、財源的には、国がもっときちっと責任を担保することによって、そして過疎地とか離島とか、そういうところについても十分な人材確保が行われるようなことを国が考えるべきではないかということは、根底の考え方としてはそのとおりだというふうに思います。
 ただ一方で、それでは既存の小中学校を全部国立の小中学校にすればいいというふうにはやはりならないわけでありまして、そういう、国立の小中学校でないのに教員だけ国家公務員ということは、やはり、形態的には整合性が合わないというふうに思うんです。
 ですから、その辺、一〇〇%の義務教育国庫負担ということを図りながら、それぞれの地方自治体における柔軟な判断が適切にできるようなそういう財源のあり方ということの考え方としては、それは共有できる部分がありますが、今の状況の中では、とても理解が全体的には得られにくいことでも一方であるというふうに思います。



○青木愛

 大変率直な御意見、ありがとうございます。
 そうですね、一朝一夕にはなかなか難しいとは思いますが、生活の党といたしましても、身分保障と地方分権は矛盾するものではないという考えのもとで取り組んでいきたいという考えを持ち合わせておりまして、また今後の議論にぜひ期待をさせていただきたいというふうに思います。ありがとうございます。
 それでは次の質問に入らせていただきまして、これも奥山仙台市長からいただいた御意見でございます。
 大綱についてでございますが、各地方自治体は、既に、教育の振興のための施策に関する基本的な計画として教育振興基本計画を策定をしております、そして仙台市では、奥山市長とそして教育委員会が十分に意見交換を図りながら、共通の認識を持って策定をしているところであるとのことでございます。
 総合教育会議において新たに策定することになります教育の振興に関する施策の大綱がどのような位置づけになるのか、既に策定している教育振興基本計画との関係が不明瞭であり、どちらが優位なのか、どちらかが追認しなければならないのかということで、大綱のレベルや内容によっては重複することもあり得るということで、国として、この大綱に盛り込むべき事項などについては、その策定に当たっての具体的な内容を示す必要があるのではないかという御意見をいただきました。既に委員会等でこれについても審議なされておりますけれども、再度、生活の党といたしまして、またこの点についてぜひ御確認をさせていただきたいというふうに思います。


○前川政府参考人

 教育基本法第十七条第一項におきましては、政府は、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定めることとされ、第二項におきまして、地方公共団体は、国の計画を参酌し、その実情に応じ、地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定める努力義務が規定されているということでございます。
 今回の法案における大綱につきましては、国の教育振興基本計画の中の基本的な方針を参酌して、施策の目標や施策の根本となる方針についての策定を義務づけるものでございまして、詳細な講ずべき施策の策定までを義務づけるものではございません。
 地方公共団体におきまして教育振興基本計画を定める場合には、その中の施策の目標や施策の根本となる方針の部分がこの改正法における大綱に該当すると位置づけることができるものでございまして、首長が、総合教育会議において教育委員会と協議し、当該計画をもって大綱にかえることと判断した場合には、別途大綱を策定する必要はございません。
 なお、大綱に定める具体的な事項といたしましては、例えば、一定の目標年度までに全学校の耐震化を完了することでありますとか、学校の統廃合を推進することでありますとか、また、少人数教育を推進することでありますとか、そのような内容が考えられるわけでございますが、大綱に盛り込むべき事項につきましては、各地方公共団体の判断に委ねることが適当であると考えております。



○青木愛

 ありがとうございます。地元の主体性をしっかりと担保していただけるという御答弁だったというふうに認識をいたします。
 続いて、衆法の方の質問に入らせていただきます。よろしくお願いいたします。
 衆法の基本理念でございますが、「地方公共団体における教育行政は、教育基本法の趣旨にのっとり、教育の機会均等、教育水準の維持向上及び地域の実情に応じた教育の振興が図られるよう、国との適切な役割分担及び相互の協力の下、その責任体制を明確にした上で教育の中立性を確保しつつ、公正かつ適正に行われなければならないこと。」とございます。
 この民主、維新案の理念の中のこの「教育の中立性」というのは、一般的に言われている政治的中立性と何か違うのかどうかというところの確認をまずさせていただきたいと思います。


○吉田議員

 結論を申し上げると、いわゆる政治的中立性と同義でございます。
 この中立性ということにつきましては、まず、教育基本法の十四条二項で、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」というふうに定められております。
 これは、学校が一党一派に偏した立場に利用されたり、あるいは、学校の教育活動自体が一党一派に偏したものであってはならないという趣旨だと理解しております。大変これは大事な概念であるということから、民主、維新の法案の第三条に基本理念として教育の中立性の確保と明記したところでありますが、いわゆる政治的中立性と理解していただいて結構でございます。



○青木愛

 そうしましたら、教育の政治的中立性というふうに一般に言われているので、政治的中立性と言い切れない何か事情があってあえてこう書いていらっしゃるのかなといううがった見方をしてしまったんですけれども、これは、教育の中立性というのは教育の政治的中立性ということでよろしいんですね。はい、わかりました。
 そうしましたら、この教育の政治的中立性、また継続性、安定性という部分、また住民自治というこれまでの教育行政の理念、趣旨がございますけれども、それは変えないということであるとすれば、教育監査委員会、このチェック機関というものがよほどしっかりしたものでないと中立性あるいは継続性、安定性というのは保たれないだろうというふうに思うんですが、これをなぜ事後のチェックにしたのかも含めて、この教育監査委員会の果たす役割、具体的なところをぜひ教えていただきたいのですけれども、どういう体制にしていくのか。


○吉田議員

 この民主、維新の骨格は、要するに、地方教育行政における権限と責任の所在を明確にしよう、こういうことで、今まで首長と教育委員会に分散していたその二つを首長に一元化する、その首長の指揮監督のもとで教育長が教育に関する事務をつかさどる、こういうことにしてあるわけでございます。
 そうしますと、首長が余りに思いのままに権限を行使して、独善的なやり方をされて混乱しては困るということで、新たな機関として教育監査委員会を設置しようということでございます。
 そして、この教育監査委員会は、首長が処理する学校教育等に関する事務の実施状況に関して必要な評価及び監視を行い、そして、その結果に基づいて、首長に対して、事務の改善のために必要な勧告をする、そして、この勧告は議会にも報告するということであって、新しい教育監査委員会と議会、この二つで適切に監視が行われるようにしたいということでございます。
 また、首長によって、教育の振興に関する総合的な施策の方針、我々は大綱というんじゃなく方針と呼んでいますが、これが策定されるわけですが、これは、専門家のさまざまな人の意見を聞きながら、原則的には、毎年度、議会の議決を経て策定される、原則的には、毎年度、進捗状況を議会に報告するというような運用が想定されているところでございます。
 こういう制度も相まって、御指摘の、チェックが重層的になされる仕組みをつくっていこうということであります。



○青木愛

 御答弁ありがとうございます。議会との二重チェックということなんですが、議会というものも、その政治的中立性を果たして確実に担保できるものかどうかということと、やはり教育監査委員会そのものの現実的な動きがまだちょっと見えてこない部分があって、ぜひ、説得性のある御説明を今後の議論の中でまた重ねてお願い申し上げたいというふうに思います。
 このチェック機能については、閣法についてもお伺いをしたいというふうに思います。
 教育委員が教育長をチェックする工夫も見られるんですけれども、これは、教育委員が民間の保護者であったりさまざまな職業の方々に入っていただいたりということの中で、執行機関の中にそのチェック機能も含んでいるという御認識であられるのか、この教育委員自身も執行側でありますので、きちんとしたチェックができるのかどうかという懸念もございます。議会の役割という指摘もあるんですけれども、議会の役割だけでそのチェック機能が果たして本当に働くのかどうかというところの懸念があるのでございます。
 閣法におけるチェック機能というのはどのような仕組みの中で考えられているのか。民主、維新案のような、今後、外部の監査機関によるチェック機能という必要性について大臣としてお考えにはなっていないかどうか。この点についてお聞かせいただきたいと思います。


○前川政府参考人

 まず、改正法案におけるチェック機能についての中身につきましてお答え申し上げます。
 今回の改正案におきましては、教育長の権限が強いものとなるため、教育長に対する首長や議会のチェック機能を強化するという観点から、教育長の任期を首長よりも一年短い三年としているほか、教育委員のチェック機能を強化するという観点から、教育委員の三分の一以上の委員から会議の招集を請求された場合には、教育長が遅滞なく会議を招集しなければならないこと、教育長が、教育委員会から委任された事務の管理、執行状況について報告しなければならない義務を課していることなどの規定がございます。
 また、教育委員会の会議の透明性の向上を図りまして、教育委員会に対する住民によるチェック機能を強化するという観点から、従来の教育委員会会議の原則公開という規定に加えまして、新たに、教育委員会会議の議事録を作成し、公表するよう努めなければならないということを新たに規定したものでございます。
 さらに、首長及び教育委員会に対する住民によるチェック機能を強化するという観点から、総合教育会議につきましても、会議を原則公開とするとともに、議事録を作成し、公表するよう努めなければならないこととしております。



○青木愛

 下村大臣の御所見はいただけますでしょうか、そのチェック機能について。


○下村国務大臣

 教育委員会に対するチェック機能ということで御質問を受けたのでしょうか。それについては、今後の新しい制度設計が国会で認められれば、その施行の中でまた適切に判断してまいりたいと思います。



○青木愛

 ありがとうございます。
 質問を、仙台の有見陳述人から土曜授業のことも言及がありました。そのことや、また、縦の行政系列の弊害等々についてもお伺いをしたかったのですが、ちょっと時間が中途半端ですので、最後に大臣の御所見を伺って質問を終わりたいと思います。
 やはり、この制度の改革のみではいじめがなくなるとは思えないわけでございまして、今日的いじめは、陰湿であったり、かつ、かげんを知らないという特徴があろうかと思います。そして、最近のITの普及によりまして、人間関係の希薄化も加速をしております。
 対策といたしまして、学校教育の中での合宿ですとか集団生活、あるいはボランティア活動などを取り入れて、対人関係を培う機会を積極的にふやしていくですとか、あるいは、週休二日の土曜日を活用して子供と地域の大人が一緒になって活動をしていくですとか、学校の閉鎖性を打破するために、社会経験を積んだリタイア組の方々を低給与で講師に招いたり、そうした形で社会に開かれた学校にしていくとか、少人数学級を進めて教師が生徒一人一人に目が届くようにするとか、こうした一つ一つの積み重ねも大切かというふうに思いますが、制度改革とともに、こうした取り組みについての大臣の御所見を最後に伺わせていただきたいと思います。


○下村国務大臣

 今、青木委員が取り上げられた事例は、まさにそのとおりだというふうに思います。
 制度をつくり、あるいはそのための法律案をつくって、それでいじめがなくなるわけではやはりないわけでありまして、社会全体の人間関係が希薄化し、特に子供たち、若い世代にとって、人間関係、コミュニケーション能力が希薄化する中、人間は社会的動物でもあるわけでありますから、あらゆる形で、今御指摘のような点を踏まえて、いろいろな形を取り組みながら、みんなで一緒に、しかし時には我慢し合いながら、認め合いながら共生し合うということを、体験、経験の中で、そして地域ぐるみ、あるいは家庭教育も大切だというふうに思いますし、あらゆる部分で子供たちを育むことによって、いじめを傍観もしない、加害者にも被害者にもさせない、そういう視点で教育を考えていくことは大変重要なことだと思いますし、そういうトータル的な取り組みをぜひしてまいりたいと思います。



○青木愛

 御丁寧な御答弁、ありがとうございました。質問を終わらせていただきます。