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  | HOME | >活動記録>>発言録2014年5月7日 衆議院文部科学委員会


地方教育行政法関係の2法案の参考人質疑
    
参考人の方々は以下の通りです
梶田叡一(奈良学園大学学長、学校法人奈良学園理事、学校法人聖ウルスラ学院理事長)
穂坂邦夫(NPO法人地方自立政策研究所理事長、元埼玉県志木市長)  中嶋哲彦(名古屋大学大学院教授)


○青木愛

 生活の党の青木でございます。きょうは、大変貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございます。質問は重なるかと思いますが、私からは、それぞれの参考人に二点ずつお伺いをさせていただきたいと思います。
 まず一点目でありますが、地方教育行政のチェック機能についてそれぞれの御意見を伺いたいと思います。
 まず、梶田参考人から、先ほどのお話の中で、合議制執行機関として教育委員会が地方教育行政の責任を持つというお話がございました。またあわせて、首長と議会の二元代表制ということの中での議会の役割についても指摘がございました。
 まず、教育委員会が執行機関として残ったということにおいて、これは自己責任で執行するということだと思いますが、みずからの活動状況をみずから点検、評価が行えるのかどうかという点と、議会の役割といたしまして、やはり議会も政治的色合いを持つものというふうに思いますものですから、その二点について、チェック機能という観点からぜひお伺いをさせていただきたいと思います。
 それから、穂坂参考人からは、首長と教育委員会を分けて、役割分担を明確にという主張がございました。今申し上げたとおり、閣法ではともに執行機関となっておりますので、この教育委員会の役割というものを穂坂参考人としてはどのように捉えていらっしゃるのか、そのチェック機能という観点からぜひお伺いをさせていただきたいのと、我が生活の党といたしますと、やはり首長と分けて教育委員会をチェック機能機関とする方が、そこにチェック機能を持たすということを考えの中に主張いたしておりまして、そして、今回出されました衆法の教育監査委員会、これもやはりチェック機能を果たす機関だというふうに思いますけれども、この衆法の教育監査委員会の実効性についてどのように評価をされているか、ぜひお伺いをできればというふうに思います。
 そして中嶋参考人からは、やはり教育委員会の再生だというお話でございました。これまで適宜改革が進められてきたわけでございますが、平成十三年には、住民自治という観点から、保護者を教育委員に入れることになりました。また、平成十九年には、いじめ自殺の事案を受けて、やはり改正が行われております。そして、このたび再びいじめ事件が起こったわけでありまして、さらにどのようにこの教育委員会そのものの改革をすればこういうことが起きなくなるのか。やはり教育委員会のこれも自己点検、評価、これができるのかどうか。
 そうした観点から、地方教育行政のチェック機能ということで、ぜひ三名の参考人に御意見をいただきたいと思います。



○梶田参考人

 私は、合議制執行機関としての教育委員会、これの自己評価、自己点検、そしてそれを公表して、多くの、例えば市であれば市民の方、あるいは、都道府県であれば都道府県民の方の批判を仰ぐということは十分に可能だと思っております。
 今、大学はやっているんですよ。大学は、毎年、自己評価、自己点検をやって、それを公表しなきゃいけなくなっております。しかも、これはお手盛りになっちゃいけませんので、かなり厳しくこういう点についてはというのはあります。
 例えば、私が今おります奈良学園大学は、この三月までは奈良産業大学という名前ですが、これは惨たんたる実情です。ぜひホームページで見てください。自己評価、自己点検、どこがとんでもないことなのかというのをちゃんと公表しております。だから、これは教育委員会がやれないことはない。やれます。
 それから、これとまた別の意味での、ただ、大学でも、第三者評価ということで外側から評価もいただきます。これは、教育委員会であればまず議会からいただかなきゃいけないとは思いますが、しかし、それとまた別の、例えば、今後もし総合教育会議というのをおつくりになるんだったら、総合教育会議の中で議論して、特に、教育委員会関係者じゃない学識経験者と首長さんたちでこれを評価するというのも一つあり得るかなと思ったりしております。
 もちろん、それを全部公表して、それで、例えば市町村であれば市町村民の方にやはり見ていただいて、そこからまた意見を寄せていただくというそのフィードバックは不可欠だろう、そういうふうに思っております。


○穂坂参考人

 進める当事者が同様にチェック機能を持つというのは、どだい無理だというふうに私は思っています。やはり、議会なら議会とか、あるいは、条例上権限を持たせた市民のそういう審議会とか、別物じゃなければチェック機能は難しいですよ。
 例えば私も、もし首長でこういうような会議をつくってやったときに、自分のやったことが正しいか正しくないかとか、瑕疵はあるかないかとか、そういうものを自分自身でチェックするというのは、それは理論的にはできるかもわかりませんが、なかなかこれは実質的には難しいだろうな、こう思っています。


○中嶋参考人

 まず、事後チェックではだめだということです。現在の教育委員会についての評価制度は、教育委員会の自己評価制度がありますけれども、それは事後チェックになっています。事後チェックは、もちろん、事後チェックの機能としてはそれとしてあるわけですけれども、問題は、子供や若者たちが学んでいて、その学びを保障すること、あるいは命や身体をしっかり守っていくこと、これが課題なわけですから、事後的に問題があったということを評価しても意味はないわけです。
 そこをではどうしていくかということが課題で、そのためには、先ほどの発言の中で責任、レスポンスということを言いましたけれども、現場で起きている問題に対して教育行政がどのように機敏にレスポンスできるかということだと思うんです。それは、トップが一人になればいいということではなくて、教育行政に対してレスポンスを返していくルートをたくさん用意するということだと思います。
 それは、学校の現場からのレスポンスもあるし、それから、保護者、住民からのレスポンス、今こういう問題が起きていて、これに対処してほしいんだということが教育行政機関に対して風通しよく通っていくということが重要で、それを確保することが課題だと思います。
 先ほど委員が、教育委員に保護者を入れるというようなところが加わったということがありましたけれども、それはお一人の方が入ればそれで済むという話ですね、法律上は。それでは今申し上げているレスポンスはきかないと思います。ですから、多くの人たちが教育行政に参加できる仕組み、これを考えていくべきだと思っています。
 以上です。


○青木愛

 ありがとうございます。時間もないのですが、梶田参考人、議会の役割についてもう少し具体的に教えていただければというふうに思うのですが。



○梶田参考人

 私は地方議会もいろいろとあると思いますけれども、私が見ているところでは、意外と、何というか、政党色は強くないと思っているんですよ、どこでも。ですから、住民目線で議論しておられるところは非常に多いなと。国会がしていないという意味じゃないですよ。だけれども、私が知っている、例えば私の地元の市議会もそうだし、大阪の府議会議員の方々ともおつき合いしていますけれども、やはり、これがこうだというふうに決め込んでやるんじゃなくて、かなり柔軟に議論しながらお立場を変えていかれるというところが、少なくとも、私のおります箕面市もそうですし、市会議員の方々もそうだし、大阪の府会議員の方々もそうだなというふうに私は感じております。
 したがって、これをもっともっと大事にして、首長さんも大事です、選挙で選ばれていますから、でも、二元代表制というのがあるということの大事さですね、やはり議会は議会できちっとした意思表示をいろいろな場合にやって、首長さんが独走しないように、あるいは首長さんを後押しするように時には後押しもせぬといかぬ、そういう形でいい緊張感をはらみながら、しかし、一度この立場を決めたらそれで何年間は変わらない、次の選挙まで変わらないじゃなくて、常に議会側は議論していただいて、いろいろなことを考え直していただいて、それで首長との対応をする、そういうことになると、住民の側からいうと非常に望ましいんじゃないかな、私はそういうふうに思っております。


○青木愛

 ありがとうございます。それではもう一点、三名の参考人にお伺いをさせていただきます。
 先ほど、穂坂参考人から冒頭、国と都道府県と市町村の役割分担を明確にすべきだという強い主張がございました。実は、前回の参考人質疑の際もやはり参考人の方々から、縦の行政系列の弊害という指摘がございまして、権力は曖昧性に宿るという指摘がございました。
 我が党としても、やはり国と地方の役割は明確にすべきだという問題意識をこれまで持ってまいりまして、これを議論する際には教員の人事権と給与負担が必ず議論になるわけなんですが、実は生活の党といたしますと、教師の身分は国が保障するということと、あと、教育水準の維持、大ざっぱに言いますとこの二点を国の役割として、あとは、カリキュラムだとか学級編制だとかいろいろなことは地方に任せるという整理をしているんです。
 これからもっと具体的にこの国の役割と教育の地方分権の整理が必要だというふうに認識をしておるところなんですけれども、この生活の党の考え方についての御所見をもしいただければありがたいですし、今後、この国と都道府県と市町村の役割分担というのを具体的にどのように捉えていらっしゃるか、ぜひ御意見を伺わせていただきたいと存じます。



○梶田参考人

 おっしゃるように、国とそれから都道府県、市町村、これの役割分担をもう少しはっきりさせなきゃいけないだろうと思っております。
 ただし、具体になると、例えば教員の人事権あるいは給与負担、これなんかの問題も非常に難しくて、私、中教審の教育制度分科会というので以前分科会長もやりましたし、だから、いろいろな御意見をまとめる役もさせていただきました。今も委員として出ております。
 なかなか難しいのは、例えば、給与負担をやめて地方に任せてしまうという議論が一時期あったんです。そうすると、とってもお金持ちのところと、それからやはり貧乏なところがあるんです。
 私のふるさとの山陰なんというのは本当にお金がないんです。やはり、そうしたらというところがあるでしょう。そういう問題。それからもう一つ、先生方が町には行きたがるけれども僻地には行きたがらないとか、それを今は広域人事をある程度やっているから、やれている。つまり、私、原理原則の問題も大分議論しました。しかし、なかなか進まないところがあります。
 ということで、私のあれは、生活の党が今お持ちのそういうお考えは非常に大事なことですので、じっくりいろいろな点についてメリット、デメリットを詰めていっていただけたらな、そういうふうに思います。


○穂坂参考人

 教育に関しては、その三者の役割、権限と、そこに今度は、やはり住民に近くなくちゃいけませんから、レーマンコントロールをどういうふうに生かしていくか。それからもう一つは、地方議会も教育に非常に熱心に取り組んでもらいたいなと思うんです、国会と同じように。
 ですから、そういう意味では、五つのそういういろいろな意味での役割分担が明確になって、どういうふうにチェック機能を発揮していくか。もちろんそれは、首長の恣意的な政治姿勢、そういうものもどういうふうに抑制していくか。そういうものをそれぞれきちんとやれば、できると思うんです。
 特例はいっぱいあると思うんですよ。例えば、非常に過疎で、これから過疎にどんどん向かうわけですが、物すごく小さいところで、とても無理だというのもあるでしょう。しかし原則は、例えば五万とか十万とか、その程度のところをどうするかというところからスタートして、それで特殊的な例外というのは絶対あるんですよ。ですが、例外がやはり原則になっちゃいけないと思うんです。
 ですから、そういうところをやはりきちんと整理をしてもらえればありがたい、こう思っています。


○中嶋参考人

 国の役割は極めて明確であると思っています。
 というのは、現在の憲法のもとにあっては、公教育制度は、先ほど申し上げたように、富の再分配型の教育制度です。国の役割は、その富の再分配としての教育が成り立つような条件整備をすることに国の主たる責任があると思っています。
 その意味では、給与負担について、それを全額国で行うのがいいかどうかとかいうのは今はすぐお答えできませんけれども、梶田参考人がおっしゃったように、地域によって教育の条件が違ってしまうといけない、貧しい、比較的財政の厳しい自治体でもそれが負担できるような仕組みをつくっていくということが国の責任であると思っています。
 ただ、委員がおっしゃった教育水準の維持ということにかかわっては、教育水準というものをどのような内容で捉えるかという問題があって、教育の具体的な内容についてまでこれは国が維持するんだということで内容にまでどんどん国が口出しをするということになると、これは地域や学校における自発的な教育改善の取り組みをかえってなえさせてしまうことになりかねませんから、そこについては、国や都道府県は自制的であるべきだと思っています。
 以上です。



○青木愛

 大変参考になりました。貴重な御意見をありがとうございました。
 質問を終わらせていただきます。